まちかど博物館アグリミュージアム「山香荘茶園」
南アルプスに端を発し、大自然豊かな山々を縫いつつ流れ続ける大井川。太古の昔より恵みの雨をたっぷりと受け、大井川には全国屈指と言われる30を超す数のダムが造られているにもかかわらず、その流れは絶えることはなく、その水量の多さを物語っています。静岡県中部地区広範囲の生活用水、農業用水、工業用水として多くの恩恵を受けています。まさに大いなる井戸と言われる所以です。大井川は信仰の川でもあり、一河川の名が付けられた神社、すなわち大井神社は流域に数多く祀られ、古来各地の人たちにより祭礼が続けられています。この大井川流域には集落も数多く、文化も歴史も多様です。
この流域に住み暮らす私たちの昔から伝わった生活物や様々な道具、そこに住み暮らす興味や趣味など、そこに住む人間そのものをそのまま見て触れて、体感していただきたいというのが、この「まちかど博物館」です。国宝になるような物などあるはずもありませんが、そこには生き生きと息づき、そこに住む人に愛でられて生きた歴史と愛着があります。生活の歴史そのものです。それに触れた貴方は、この大井川という大河の周辺に集落をつくって、細々と歴史の中で生きてきた人々の生き様を感じるかもしれません。いや、何も気負わない、ありのままの人間を感じるかもしれません。どうか是非その中に入って、その空気を一緒に吸い込んでいただき、ありのままの面白さを見つけてほしい…それが、この「まちかど博物館」です。
山香荘茶園は、こうした「まちかど博物館」の一つとして認定を受けた施設です。
川根茶の製茶農家として唯一の認定施設
昔からお茶作りを歴史ある川根茶のど真ん中で続けてきた製茶農家として認定を受けた唯一の施設です。実際に川根茶を作っている茶畑、四季折々のその風景、時期には茶畑ではお茶摘みの体験や摘みたての新鮮な茶葉を見ることができます。また、昔ながらの製茶工場とそこにある機械は実際に製茶に使用しているものですので、製茶時期はすべて稼働しており、製茶のされていく行程をすべて見ることができます。また、製茶時期でなくても、製茶機の動く様子を体感できます。店舗内では、できたてのお茶の試飲・喫茶体験ができますし、お茶の話や土地の歴史の話など、美味しいお茶を飲みながらお過ごしください。
山香荘の歴史
川根と一口に言いますが、大井川の根っこという意味から川根と呼ばれたと言われます。歴史はとても古く、当園のあります藤川という土地の名は、平安時代から南北朝時代の荘園に関する文献に登場します。天竜川から大井川までの間の山間地は、山香の荘という天皇の直轄の荘園でした。この荘園の一番東側の端が、「山香の荘東手、藤原の地…」というくだりで登場します。「この地の東の端に藤原川が流れる」とあり、この川が現在の榛原川で、藤原という村が現在の藤川村のことで、都落ちした藤原氏ゆかりの地との説もありますが、時の権力者の追跡をはばかってか、また、単に川の名と土地名が混同され、いつの時代にか藤川という地名に変わったといわれます。江戸時代末期まで、藤川村には七社、七寺、七堂といわれ、小さな村にしては多くの寺社が祀られていました。
これも、南北朝時代の戦の名残から、寺社は南朝方が戦のための連絡場所として使うため建立されていたという説や、税を逃れる目的で寺社の領地を多くし、大きな土地持ちがいない形をとるという、村人の知恵の賜物とする説もあります。現在、お寺は慈眼山観天寺にすべて統合され、お堂はほとんどやはりここに統合され、神社は大井神社ほか数社に集合されています。山香の荘は、戦国期の群雄割拠の時代となって、各地ばらばらに分断されていったと思われます。村内は戦国初期は、対岸の土岐山城の守の城方の兵糧貯蔵場所であったという説があり、また、武田氏の侵攻により占領され、武田方の戦用の兵糧所となりました。対岸は今川の領地となったため、国境が大井川ということで、大井川を挟んで小競り合いや取引も行われたということです。ですが、大きな戦などもなく、きわめて平和な小さな集落であったようです。
様々に変化する時代の中で、山香荘という当地に最もふさわしく、先祖の原点を忘れないために、山香荘の名をいつまでも大切にしたいと考えております。
展示品
当家の古い家具、蝋燭立て、ほかい、火縄銃、製茶の道具、茶審査用具など、展示充実中。
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お茶と木材の売買鑑札(明治・大正) 軍役所発行 |
ミニ製茶機 | 釜入り用鉄釜 |
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蒸し機 | 粗揉機(そじゅうき) | 製茶工場内部 |
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茶箱用荷印の型(鉄製) | 拝見盆(紙製) | 古い屏風 |
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ほかい(持ち運び用容器) | 燭台 | 矢立(昔の筆入れ) |